著作権のフェアユースはあり得るか。

 
前提
・著作物は、つきつめれば、個人*1が生み出すもの。
・特許のように出願人・代理人がいたり、職務発明制度があったりはしないもの。
・もし権利化しやすいパッケージ済み著作物であれば、他に意匠権や商標権や不正競争防止法などでも保護できる。そちらで保護できなかった扱いづらい権利は最後に著作権に救いを求める。したがって著作権法の守備範囲は自動的にややこしい法域となる。
著作権法第30〜47条においては「利用の例外」として、権利を侵害せず利用できる方法を毎年順次拡大しつつある。
 
本論
著作権フェアユースは、定義が不可能と寺坂は考える。
・もしフェアな使い方の区別ができるとすれば「原著作物に対する愛(=保護と育成の意図)があれば*2フェア」といえるかもしれない。
・ただし、常識でわかるように、法的に愛の有無は定義できたことがない。個人の行動が愛と金と妄執のどれが優勢な行動かは常識でしか推し量れない。
・それはたとえば、離婚訴訟の親権の取り合いをみてもあきらか。著作物は「子」にあたり、どの親*3に親権がわたされるとその子にとってベストの結果が得られるかは、ケースによって全く異なる。常識と違う経緯も多くあるので、「母=原作者が親権をとる」というのは「議論開始点」にしかならないし、してはいけない。さらに「ある条件を満たした場合は父親が親権をとれる」などとルールを決めていいものか。私には絶対にそうは思えない。父親と母親のどちらが養育に適しているかはかならず丁寧な聞き取りを含む離婚調停によりケース毎に異なる結果で決定されるべきである。聞き取った結果から「ルール」ではなく「傾向」は判断できようし、裁定組織内での「運用基準」となるかもしれないがそれも全ケースにつかえるものではあり得ない。*4
・「著作物」は「人間の子」と同程度に多様性が高い。キャラ弁からペガサスマックス昇天盛りまで、多岐に及ぶもの、だれも扱いかたをまだ知らない、新しいもの、が日々あらわれている。だれが一番うまく愛せるかなどはわからない。価値付けもできない。いつ寿命がつきるかもわからない。
・さらに、「フェアユースの基準決定に判例法を用いればよい」との案を聞いたが、その場合、裁判に進む時点で裁判費用や名誉などの点で救われない思いをする人が必ず出るので危険である。もとより著作権のもめごとに裁判化を期待すべきではないと寺坂は考えている。訴訟になったとしても判決がでるまで対立構造のままであったならばその著作タイトルは内容よりいわゆる「炎上」した事実のほうが有名になってしまい予後不良となる可能性が高い*5。協議・調停・和解で穏和に解決できればそれがベストであることが多いだろうというのは、他の訴訟ごととおなじである。または判決をまたずとも、著作権法の側でどんどん改正が進むので、判例までいかず和解例*6を各エージェントなり裁判所なりが蓄積している現状に立脚して「ケースワーカー」のようにして発展していくのがよいであろう。和解例の蓄積であっても「傾向」としてとらえ、「基準」とすべきではない。したがってケーススタディの蓄積物が「フェアユースルール」といえるまでかたまるかは期待できない。公平とはケースによって違うからである。
 
展望
フェアユース日本版を考えるのであれば、上が押しつけるルールよりも当事者の「黙認(沈黙の仮許諾)」と「第三者の勉強」による「あうんの呼吸」を生かすことがコンテンツ業界の発展のために重要であると思う。
ジャスラックは悪者でもなんでもないが、足りない。
アーカイブが足りない。ジャスラック漫画版も存在していない。
・今後とも著作権法30条以降が改正で充実したり、実効的な判定なり調停を行い得る公的組織ができることを寺坂は期待している。
著作権の扱いにつねに著作物への尊敬や愛があることを寺坂は祈る。
 
 
参考

「抜粋の性質と目的」
(the nature and objects of the selections made.)
「利用された部分の量と価値」
(the quantity and value of the materials used.)
「原作品の売り上げの阻害、利益の減少、または目的の無意味化の度合い」
(the degree in which the use may prejudice the sale, or diminish the profits, or supersede the objects, of the original work.)」

フェアユースの法理は抽象的な判断指針として示されているに過ぎず非常に曖昧な点があるため、個々のケースについて著作物の無断利用が著作権侵害になるのか否かに関して訴訟で深刻な争いが起きやすい。例えば…

上2カ所はhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A2%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%82%B9より引用

 以上
  

*1:自然人

*2:または少なくとも儲けより愛が主眼であれば

*3:または第三者

*4:例外的に、母親の名乗り出がない「孤児著作物」についてはフェアユースがかなり定義できそうですが、それでも著作全般に共通するルールは定められないとおもいますのでここでは書きません

*5:アメリカでは事情が違うこともあろうが、日本のコンテンツ市場では高いデリカシーが求められる場合がある

*6:なら現在も非常にたくさんある