いまアメリカのソフトウェア特許に起きていること - It's Not About the IP

弁理士の日にブログつながりみたいなのがあったのですね、知りませんでした。ここが参加できるクオリティかは別ですが。
 
10月の委員会で福井健策弁護士の講演を聞いてすごくためになったです。
twitterも拝見して、そこからAIについての議論をみて少々コメント。
弁理士は理系法務ですが、全員がコンピューターに必ずしも強いわけではないです。
ただ、ビッグデータとかAIに対する感覚は大体さめたもので(以前ビジネスモデル特許が流行ったときと同様)、AIも所詮は人の使うツールである。SFがどうセンセーショナルなフィクションをつくろうとも、自律意志などはまだ100年は発生しない。多数の人間の行動をデータ加工して鏡として反映するだけである。今までの職務発明で扱えるということです。
フィールズ賞とった数学の公式がわからないから怖い、とか、レコード大賞が握手券で左右されるしくみが民に見えないから怖い、いうことはないのにAIだけは政府が「マザーコンピューターが人間に叛旗を翻すはず、ロボット三原則はどうした!」とよほど怖がっているのは不思議です。みんなSF世代という解釈はでき、それならそれでうれしいですが、なんだかなあ。つり目で背の高い女性キャラは有能だが裏切る、とか、ヤギは邪悪、というSFフィクションの「おやくそく」記号化はいくつもあり、知っていれば楽しめますが、現実とはしっかり弁別していただきたく。グーグルの碁AIについては、今のところサーバー費用(電気代、いわばエサ代)が何兆レベルでかかっているようです。超加速器トリスタンとかと同様のサイエンス上の問題解決手段の一つにすぎません。また、小規模でたとえればデジタル漫画家さんがつかっているグラボも碁AIとおなじように計算をかさねて美しいぼかしを実現していますが、それはデジタル漫画家さんだから人間に「美しい」と判定されるものをつくれるのですよ。それをみてアナログ(インクで絵を描く)漫画家さんが「グラフィックボードやCGソフトに対して」なにか恐怖を感じたりすることはあるでしょうか? むしろグラボが製造されるしくみもしらずに高い、難しい、あんなものちっとも便利でも美しくもないという声があったようですよ。でも、そのうちそれも解決されるわけです。問題はいつも技術よりもそれをつかう人間にあります。
 
以前のブログにも書きましたが、名大の先生は「(小説を書いたAIよりも、そのAIをつくった)僕達に著作権をほしいよ!」とおっしゃっていました。AIは宇宙なりアメリカからのインベーダーではなく、やはり人の地道な積み重ねの成果です。
 
という話をしたりするため来季も講義がんばります・・。