「金魚電話ボックス」初弁論 原告「外観や特徴が一致」/商店街「表現、創作性なし」 :日本経済新聞
 
実際に電話をかけられない芸術作品と実際に電話をかけるための電話ボックスは機能が異なるし物品も異なる。
物品が異なる以上は、共通点は見た目(細かいところは違うので印象、アイデア)だけということになる。
もし海外に先行する同案作品(アイデア)があったとしても芸術作品の著作物性を否定する根拠にはならない。神は細部に宿るといわれる、特に表現ではそれが著しい。
先行芸術作品の著作物性を認めた上で、「でも(先行外国電話ボックスがあった現状表現情勢)の中で見ると異なる著作物なんですよね、依拠性もありません」が本筋だったように思う。
 
ところではてなダイアリーは撤去されるそうです。今までご愛顧いただきありがとうございました。

最近気になったニュース

フォントの改変!!! - Togetter リンク先下の方に法的解釈がありましたがいまいち釈然としませんでした。編集物、データベースの著作権にあたる可能性は。



碧南(タントピアしか知らない)のキリンラーメン自体は名古屋周辺のリゾートであるラグナシアとかのお土産品でたまにみかけます。カピバラなどのパッケージでいろんな味が同じ製造者から売りだされています。( kirinramen.jp )セットで取得しておきたかったのに、キリンだけ欠けると困るってことかもしれません。
キリンラーメン改名へ。商標権めぐりキリンビールとトラブル - Togetter キリンラーメン側の先使用権などに問題があるため、訴訟などはしないそうです。
ラーメン側のファンが「残念」に思うことはよいのですが、不法行為などと煽り、ビール側を「たたく」状態にならないよう注意を(逆にそのことで不法行為が発生することがあります)。
キリン商標問題はキリンラーメン側のやらかし。キリンビール側は控えめで本来黙認していた - Togetterしっかりやっている方がいらっしゃいました。
キリンラーメン騒動 経緯と対策 - Togetterあなたは弁理士か(と思うくらいがんばって調査し、提案までしている)。自分はアニマルラーメンシリーズとか入れたほうがよいかとおもいます。

「キリンラーメン」に関する大人の事情について(栗原潔) - 個人 - Yahoo!ニュース定番栗原弁理士の解説。やっぱり弁理士にいわせればちゃんと商標とったほうがいいですよソレ、となりますね。

ペットボトルを分解できる酵素が実験施設で偶然に生み出されたことが判明 - GIGAZINE

分解ととらえられる現象としてはまず融点が下がった(250→70℃)だそうで、どこが切れているかの検証については公表されていません。
PETすなわちポリエチレンテレフタレートは通常エチレン部分が(芳香環がないため)分解しやすいとされています。テレフタル酸は(たとえばアイフォンやガラストップコンロ、眼鏡などにつかわれているPC、ポリカーボネート樹脂の主要成分である)BPA(ビスフェノールA)にくらべると分解されやすく毒性も少ないとされている(うろおぼえ)ですがそれでも芳香環は基本的には毒性があるものです(薬にもなったりしますが)。
http://www.sciencelab.com/msds.php?msdsId=9925176
この酵素をPET分解はよいことだといって野放しにすると環境に大量の毒が出かねないので、回収後、密閉空間等で分解するなど、現行法の化学物質取り扱い手順に従い、慎重に扱ってほしいと思います。

専門外のお遊びですが、近頃インターネット界隈でかなり気になっていることを法律で解決できないかとおもってなんとなく書いてみました。

注意:これは個人が遊びで考えた全く架空のものですから、誤解を生じるような利用、その他の悪用は固く禁じますリンクによるシェア、発展させる議論のための部分引用(ただし引用の3原則に沿うもの)は大丈夫です。
ネットプライバシー法法案
目的:
・コンピューターネットワークの発達により私人と公人の区別なく、ユビキタスな意見や表現の発信や保存が可能となった世の中で、情報発信および情報利用の適切な住み分けを意図し、そのことで情報化社会の秩序とコミュニケーション品質を保ち、ひいては個人の感情の安寧を保護する。

定義:
・自然人は知りたいことを知る権利(略称:知る権利)と知らされたくないことを知らされないでいる権利(略称:不知権)を併有する。
・自然人は肖像権および人格権を有する。
・動産は物の肖像権を有する。創造されたキャラクター(架空人格)はキャラクターの肖像権およびキャラクターの人格権を有する。
・インターネットへの投稿者は「自分のコンテンツの存在を、特定の人に知らせない権利」(略称:投稿者のプライバシー権、または宛先指定権)を有する。
 
規制:
1.不知権の保護のため、インターネットサービスプロバイダは知りたくない情報はタグ(エロ、グロ、政治、宗教、企業広告(ステマ))づけしオプトアウト可能な仕組みを用意しなければならない。
1−1.15歳以下のユーザーには(エロ、グロ、政治、宗教)を最初から到達不能としなければならない。その他、サービス内容に応じて詳しく定めることができる。
1−2.選挙公報のオプトアウトは別途公職選挙法で定める。ブログやニュースのタイトルはオプトアウトではなくタグ付与により対応する。
1−3.コンテンツ投稿者、サービサー等が適切なタグ付与をして閲覧の意図を選択し閲覧者に周知しているにもかかわらず、対象外であると知りながら閲覧した者(たとえば成人コンテンツを閲覧した未成年者)への救済および罰則はいずれも「見た」ことそのものにとどめる。その上で「見て不快な思いをした」こと等を理由に、コンテンツを投稿者の意図外の目的で乱用することは、知りたくない権利(不知権)および知らせたくない権利(宛先権)の侵害となる。
  
2−1.ネット秩序の維持のため、同一の意見を10回以上重複して書き込んだ(内容が明白に虚偽であるもの、また停止予告の警告をした後のものについては10以下の規約により定める回数以上書き込んだ)者については、サービサーがアカウントを停止することができる。他の投稿者のプライバシー権を大きく侵害した者もアカウントを停止することができる。
2−2.アカウントの乱用をしたものおよび頻回アクセス要求(DDoS攻撃)をしたものが使用したIPアドレスはそのもっとも細かい区分において技術的に仮停止処分を執行することができる。このIPアドレスについては記録を十分残さねばならない。

3−1.他人のインターネットユーザーネームに関する住居、行動範囲などを必要もないのにネット公開した結果ストーカーを幇助したものはストーカー防止法の幇助罪にあたる。
3−2.他人の営業上のネット名に関する虚偽の事実を報道の必要もないのにネット公開した結果、他人の営業を妨害した者は、威力業務妨害の罪にあたる。また利益を害したものは損害賠償の責を負う。
3−3.インターネットサービス提供者の立場を利用して知り得た個人情報を社外に漏洩したものは個人情報保護法違反にあたる。インターネットサービス提供者の立場を利用して知った個人情報を利用して利益を得たものは業務上横領にあたる。
3−3.上記はいずれも死して○年以上たった個人、また営業停止して○○年以上たった店には適用されない。
 
4−1. 人、動物の肖像権ビジネスにおいてサービサーは肖像対象の人、動物の人格を侵害し、または生物学的幸福を妨げる行為を強要してはならない。(アイドル犬の声帯を切る、女性〜男性アイドルに恋愛禁止を申し付ける、連日の深夜に及ぶロケ、大食い、早食い、辛い食品の無理強いなど)
4−2.前記4−1以外の場合において肖像権利用ビジネスにおけるファン秩序は基本的にはサービサーが維持する責を負う。サービサーが存在していない場合はネットプラットフォーマーが肖像権者と適切に協議しなければならない。
4−2−1チケット等権利の高額転売が発生する場合は迅速に認証ユーザー相互の原価取引環境を用意し、それ以外の転売チケットを無効化するものとする。
4−2−2.物品などの高額転売が発生する場合は後日前受金で受注生産等を用意するものとする。
4−2−3.ユーザー数のかさあげを目的としたリセットマラソンや、アクセスごとに抽選結果がでるくじ等、2−2に誤解されかねない作業を多くのユーザーに課す仕組みを意図的につくってはならない。
 


以上です。私が知らないだけで、別の法律や運用基準で対応できているものもあるとおもいます(全く存在しないとしたらおかしいですよね)ので、間違いなどありましたらコメントやトラックバックなどでご指摘いただけましたら幸いです。判例法で運用すべきという案もあるかとおもいますが、現状では和解も多く追いついていないとおもいます。

参考文献というか、志向を深めるきっかけになった記事はこちらです。
立命館pixiv論文問題Q&A
見かけたなかではここがかなりブックマークやトラックバックをあつめていましたが、原報(プライバシーの問題があって公開停止されました)を生で読んだ人と読んでいない人がどのサイトでも混在して議論しているので、盲人象を触るような話に感じられます。私はつてがあって最初期の段階で閲覧できたのですが、冒頭から予断に満ちた文に感じられ、最後まで読みたくないものに感じたのは事実です。

寺坂は、翻訳・翻案などにより得られるとされている「二次的著作物」と、
若い創作者が一般に使う「二次創作物」とは全く違う性質をもつものであり弁別するべきであるとおもっています。それはどこかの質問応答でよく説明をされているものをみたからです。
みつけたら後で貼っておきます。
追記、みつけました。
http://q.hatena.ne.jp/1446855238

無許可マリオカートのマリカー、全方位に喧嘩を売っていくスタイルで絶賛営業中 : 市況かぶ全力2階建

キャラクターの肖像権という新しい法律上の概念が先に実行されているようです。
適切な法改正(または新法案)が国会にて議論されるべき時期ではないでしょうか。
記事中では急ぎ意匠権をとって対処したのだそうです。

人工知能は難病の「早期発見」をどう変えたのか|WIRED.jp

人工知能による頭脳活動補助はインフラになりつつあります。

知的生産産業とAI著作権(AIジュークボックス)

続AI著作権です。細かく追記しています。
  
クールジャパン計画によってコンテンツ産業がもりあがっており、第四次産業革命ともいわれています。AI著作権についても考えていこうという機運があります。
 
以前の記事で、次のようなことを述べました。

(要約)
著作目的にかぎらず人間に命令されて動作するAIプログラムはツールであり、その成果における責任は、今まで同様、製造者、使用者に場合に応じて帰属を決めるべきである。これは、「自動運転技術を導入するにあたって、自動運転技術が原因となって事故がおこったらだれが責任をとるか」というたった今別の分野でも考慮されている課題と同等で、どのような未来がくるか予測できないので今から一律に決めるべきではないが、一度パターン化し判例として抽出されれば応用が効くはずである。
現在自動車メーカーでは高齢化や機械化と安全の軋轢を見据えて慎重に調整がおこなわれているが、著作目的のAI利用でも、同様に何らかの軋轢が予想できるので、出来る限り法整備をするべきだ。著作権においては、AIが関わらなくても定義中の思想感情要件、アレンジャーの権利、職務著作者の権利などが未整備であったり判例の混在で混乱しがちであるので、法整備するなり指針を示すべきだ。

 
この論ではさらに深めて、著作(=頭脳労働)AIの利用がグーグルやamazon、小売店POSなどによって得られるビッグデータと組み合わされ、新たな普遍的ジャンルにひろまったらどうなるかについて、将来ほぼ確実に起こり得るケースと現在の法律の組み合わせで思考実験として考えてみます。なおこの文章は個人的な考え方ですので法的正確性について責任は負えません。
 

仮定1 AIは非常に効率がよくなり、市販コンピューターを数台つなぎ合わせたものにビッグデータを学習させた学習済みモデルからなる人工知能αをインストールして実行ボタンを押し、そのまま個人()が電気代を払って待つだけで、どれも名曲といえる高レベルの、新規な楽曲が数万曲製造された。(楽曲群A

問1 このとき、個人aと人工知能αはどちらが楽曲群Aの著作権を所有するべきか。
答1 個人aが楽曲群Aの著作者となるべきである。(著作者a)
   aは「このボタンをおせばすばらしい曲が得られるはずだ。自分には高レベルの曲が必要だ」と思って創作実行ボタンをおしたのであるから、思想・感情・創作的表現を要件とする著作物性の楽曲群aへの付与を阻害するような法的要素は見当たらない。
   人工知能αそのものは別人bの知的財産(特許)である場合、別人bは人工知能αの個人aへのライセンス契約内容によっては、著作者としてのaの権利をあらかじめ制限し、aが創作した場合も成果物の著作権をbなどに優先的に付与しているケースも考えられる(たとえば、αにより創作された著作物の一次的権利はbに属すると規定しておくとか、Aはaとα提供者の共有著作とするとか、著作者表記に「with α」などを併記しなければならない、など。)。この場合は契約が優先すべきであるが、この場合は問題を簡単にするためaとbが同一人物であるとする。
   もし思考・感情が要件でない場合はαが一次的な著作権者になれそうに思えるが、著作権法上の著作権の所有者は民法解釈上は自然人または法人とされているのでαが一次的著作権者となるのは無理であろう。しかし、人工知能αを資産として保有する別人bのつくった営利団体が法人格を取り、かつ個人aと契約を交わせば、「人工知能α」のライセンス団体が現行法上の楽曲群Aの著作権の(共有)所有者となる場合もありそうだ。

 
問2 著作権の発生時点はいつか
答2 著作人格権・財産権とも、著作者aが「完成した」と思った時点(それは実行ボタンを押し人工知能αが作成された曲を奏で、全部聞き終えた瞬間であるかもしれないし、aがさらにアレンジを加え終えた瞬間かもしれない)。
  

仮定2
楽曲群Aは著作者aによって、a自身の創作物として全曲、インターネット上で発表された。

問3 著作者aが楽曲群Aの発表にあたり「人工知能αを使用して制作した」という事実は敢えて隠しておき発表しないとする。著作権法上の違法性があるか。
答3 問1の回答に書いたとおりであって、著作権法上の違法性は直ちにはみあたらない。人工知能αには著作人格権は(特段の事情のないかぎり)所有できないと考えられる。αの操作の難易度や、個人aの音楽知識の有無なども、楽曲Aの著作物性そのものには関わりがない。したがって違法性は(この条件だけからは)みあたらない。別途、特許法上、またはbとの契約上の違法性の有無は検討すべきである。

なお、過去、別人が作曲していたことを隠して著作人格権を侵害したゴーストライター事件があったが、それと人工知能の場合とでは判断が異なる。現在の著作権法も、一般社会の倫理や道徳とは異なる部分がある(オリンピックエンブレム事件)。
 

仮定3
楽曲群Aは公開され、しかも個人aが人工知能αを用いて制作したと発表された。ここでコモンライセンス曲Cの作曲家cがいた。Aのほんのわずかな一部であるが自分の曲Cと似た部分があり、しかも実際に「αの作成時に学習のため利用された楽曲100万曲」のなかに、曲Cが存在していたと知った作曲家cは、aから利益還元どころか挨拶さえも全く受けていないことを思うと複雑な気持ちになった。

 
問4 ビッグデータの収集・加工行為は著作権法上の違法行為にあたるのではないか。
答4 収集加工行為そのものは違法行為にあたらない。このことは現在の著作権法に規定がある。

第四十七条の七  著作物は、電子計算機による情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の統計的な解析を行うことをいう。以下この条において同じ。)を行うことを目的とする場合には、必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行うことができる。ただし、情報解析を行う者の用に供するために作成されたデータベースの著作物については、この限りでない。

よって収集加工行為そのものは(市販データベースを無断でハッキングするのでないかぎり)著作権法上の違法行為にあたらない。
 次にビッグデータとして採用された曲Cが著作権侵害されたかどうかについては、今までの判例をみても表現物(成果物)同士の比較がメインである。表現成果物から抽出される、画風・作風・雰囲気・表現工程といった抽象部分のコピー行為には「原作の抽象部分に著作物性あり・依拠性あり・侵害有り」とまで認められたことがない。 加工された楽曲群Aが収集元と同一または類似した楽曲を含む「複製権侵害」でない限り、楽曲群Aの公表行為も複製権侵害にもあたらない。
 しかし、たとえば一部、または一音でもはっきり「曲Cのみ」から採用されたものと具体的に判定できれば(たとえば音波形状などによる客観的なデジタルデータ比較上も依拠性が認められるなら)侵害はみとめられ得る。(たとえばCに含まれるガラス破壊音はありふれた音ではなく、特徴があり、それがAのある曲にくりかえし使用されていた場合)。還元される利益は曲全体の中のC依拠部分の寄与率(演奏時間)によって算出される。
 結局、aはAの公表にあたって、あらかじめCその他の公表済みの楽曲(少なくとも公衆に知られているもの)に対して、著作権(財産権、人格権)侵害となりそうな楽曲は取り除いておく法的責任がある。(人工知能αがそのような先行楽曲をチェックする機能や候補表示から避ける機能を搭載するようになってもおかしくはない)

問5 人工知能αはどのように保護されるべきか。
答5 人工知能作成者の意図に沿うべきである。もしコモンライセンス公開する意図がないなら、譲渡にあたって通常のプログラム保護手段、プロセスの暗号化により逆アセンブリを防ぎ、またデータベースへのアクセスを監視するなどといった現在通常行わていれる適切なプログラム用セキュリティ手段を用いてノウハウとして秘匿することが必要である。もしデータやプログラムなどの重要な部分の秘密が意図に反して漏れた場合は不正競争防止法条の営業秘密としての保護を求めるするか、特許(アルゴリズムを利用した楽曲プロセス装置等の発明)として保護すべきである。
 

仮定4
αの楽曲群Aは「安い・早い・上手い」音源データベースとして周知された。人間の作曲者にフルオーダーするかわりにセミオーダー・イージーオーダーの感覚で頻繁に利用されるようになった。Aの中の曲を買うには、業者登録と前金の支払いが必要であり、今のところ無料で全曲を試聴することはできない。
マチュア作曲家dは自分で苦労して作曲した新しい自作曲Dを発表したいが、Aは数が多いので、Aの中の1曲と偶然カブっている可能性がある。Aは数が多いので、お金と時間を捻出して自分ですべて調べることができず、かといって未調査のまま発表してしまえば訴えられる可能性がある。

問6 dのような創作者をどのように保護するべきか。
答6 著作権には独占性はあっても排他性はないとされている。偶然、同時多発的に創作された作品は、類似ないし同一であっても別個に著作権を持つことができる。したがってアマチュア作曲家dがDの創作にあたり絶対にAのなかのどの曲も依拠していないことを証明すればDの著作権も認められる。(たとえば、没になった試作品や、αとは別の作曲ツール(人工知能であってもよい)で状況を再現することは依拠性がない証明と認められやすいであろう。)しかし、DによくにたAの1曲がCMなどで日常的に耳にする状況であれば依拠性が認められるであろう。
 しかしもし依拠性がなく(ないと証明するのは悪魔の証明であり非常に難しいが、たとえばdのみならずあらゆる曲を日常耳にすることがない海外へ旅行にいっている間に創作したなどの事情があれば可能である)、dは問題なく著作権を保持することができても、すでに使用されている曲に似た曲を発表することは、「パクリではないか」との悪評を招くことになるので、Aの公表によるd等の従来型創作者の萎縮は避けられない。
 検索性についてはAを所有するaの協力の元でしか調査が不可能であり、Dをaに公開せずに確認する手段がない。Aの中にDの類似曲がないかを調査する非公開かつ中立的な調査機関が必要であるとかんがえられる。これはAがAI著作であることとは直接関係がなく、現行のJASRACに対しても現実に指摘されている問題である。


まとめ
現代人は生きているだけで知的活動を行い、データを発生する。何の気なしに無償公開されるブログやつぶやきといった人の思想・感情を含む著作物も、個人特定情報と切り離して集積されることによってビッグデータとなり、適切にインデックスされることで天然資源となり、さらに複雑な加工を施され提供されることで人間の頭脳労働に欠くことのできないツールや、ひいてはインフラとなる。
もちろん自動車の自動運転技術もインフラ化の途上であろうし、他にも、農産物等の等級や異物混入(虫など)の判定に用いられる人工知能技術(自己学習型コンピュータプログラム)などもインフラ化しつつある。
そればかりでなく、一般的に著作の補助(または主役)となるインフラとして人工知能が広まっている例も枚挙に暇がない。頭脳労働インフラ化した人工知能としてはたとえばグーグル検索の際にウィンドウの下に表示される検索語候補予測(グーグルサジェスト)がある。グーグルサジェストでは検索語の冒頭数文字を入力すれば、最近ニュースとなっている固有名詞や芸能人の名前を一発で正しく表示するため、その表示行為そのものがグーグル外部からの世情調査追跡対象となっていたり、欧州の「忘れられる権利」として削除対象にされたりしている。グーグルIME(入力補助、漢字変換を適切に行える)やグーグルスカラー(論文のアブストラクトがインデックスされている)とともにすでに無料で使えて当然ものと認識され、インフラ化しているといえる。

インフラの一般論として、一たび、人間社会でインフラとして認定されるような大きな産業革命があると、その発生と消費の特性にあわせて市場で政府により厳密に管理され(たとえば塩・タバコにおける専売条例や、パソコン・スマホにおけるOSがそうであったように)、独占禁止委員会の市場独占調査の洗礼をうけたあとは、「資源」のひとつぶひとつぶである個人にお金での利益を還元させるよりも、「採掘効率」を重視し、結果物の量や質の向上などによって社会に大きな利益を還元するようになる傾向がある。
上記の例でも、楽曲群Aができたことによって、社会には当然大きな構造変化が生じ、目に見えない利益(「ユーザーエクスペリエンス」)が増大し、テレビ番組やドラマ等の創作における音楽インフラが整うと考えられる。たとえば楽曲群Aの公開により世界の音楽シーンが50年進化したといわれるかもしれない。
一方でcやdといったアマチュア作曲家はのりこえられないベートーベンのような大作曲家がいきなり100人出現したのと同様で、仕事をしようとしても報われず、創作への意欲を失いかねないのも事実である。グーグルサジェスト(グーグルIME)も一般的な辞典・百科事典・辞書・現代用語の基礎知識、などの書籍の作成者に影響を与えるであろう。他にもグランブルーの誕生がチェスプレイヤーに、ボナンザやアルファー碁が棋士に影響することはあるであろう。
しかしその流れはAI(とよばれるコンピュータ技術)が加速させただけで、いつか人類の末裔がむかえるはずと予測されていた事象が、自分たちの生きているあいだに来たということでしかない。
となれば、AIであるからと特別に厳しく審査するのではなく、インフラになるものだから逆に手厚く保護するのでもなく、通常運転の著作権でいちいち人間著作の侵害疑い事件と同様の判定をしてゆくことで、「AIだろうが人の頭脳だろうが著作としてのセンスとクオリティだけが問題なのだ」と世間全体で納得してゆくしか無いと思う。
それは農産物の選別など、人類が古来より営々と行ってきた仕事の精度がまた一つ上がったに過ぎないのだから。
 
なお答5でも書いたが、個人的には、AIプログラムそのものの保護については通常の著作権(ただし職務発明や思想感情項目の改正が必要)+特許権不正競争防止法が妥当であろうと考えており、特許保護については弁理士の能力が最も発揮されるところである。
ジュークボックスのAI化や、自炊についてもこれに近い気がします。